クリスマス・キャロル

それは小学校2年のクリスマス前、図工の授業でした。「ねえ?どうして!どうして、お母さんに教材を買ってください。って、お願いできないの?」そう言って、先生はさんざ怒鳴って、挙句泣き出すのです。いい大人が子供の前で。先生は「人情味溢れる先生」らしく、児童にも父兄にもそこそこ人気がありました。しかし、小学生だった私は、ただ「メンドクセーババァだな」と思うだけでした。彼女からの詰問には、意識を身体から切り離して、考えることを放棄しました。後は、ただ、目を伏せていれば良かったのです。

機嫌を損ねれば食事もロクに与えくれない両親に、「図工の教材を買ってください」などとお願いするのは、チョーナンセンスな事でした。何を言っても無駄なのは、両親にも担任教師にも同じ事でした。「大切な家族のためにクリスマスプレゼントを作りましょう!」そんな授業に何の意味があるのだろう?って、思っていました。それは、プレゼントをしたいと思う家族と、それを喜んでくれる家族がいて成り立つ授業なのです。

ちなみに、当時小学生の私は、毎年のお年玉には一切手をつけず貯金をしていました。また、親戚の家のノラ仕事や繊維工場の手伝いをして働いていました。そのお金で文房具代やら給食費やらを払っていました。(実は、ほぼ親の遊興費になるのだけれどね♪)両親から、「お前みたいな尻尾(長男長女以外こう呼ばれる)は、飯を食わしてもらってるだけでも有り難いと思え!」と言って、殴られて育ってきたからね。自分の稼いだ金ですら「教材買ってください」とは言えなかったのですよ。

時々、私は壊れます。いつもは飄々と生きていますが、時々、小さな頃の深い傷が疼いて堪らない時があるのです。年々薄らいで、忘れかけているようで、それでも年に数回は思い出すのです。

今日、クリスマスの商店街でお子さんを叱るお母さんを見かけました。まだ3歳くらいの子に「ねえ、なんで!?なんで!?なんで!?」と詰め寄っていました。ただ、泣き続ける小さな子を遠くに見ていると、私は胸が苦しくなってしまいました。ただ、苦しくなって目を伏せていました。お母さんが小さな子に感情をぶつける理由も、何となくはわかるのです。あの時の先生のように、感情をぶつけてくれる事もある意味生きた教育なのだろうから。

今日はクリスマス。私は小説「クリスマス・キャロル」のスクルージとあの時の先生を思い出すのです。私にもまだ何か変えられるものがあるのだろうか?そう自問しながら。

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コメント

  1. ジャイアン より:

    子どもの貧困をやっていたのですよ。
    とっても胸くそ悪くって、チャンネルを替えたかったんですよ。
    でも、替えたら負けるような気がして、最後まで観ちゃいましたよ。
    その前日には、夜中に二時間半も、妹と長電話。
    妹から相談を持ちかけられたんですけどね、その原因の根をたどれば、私たちが育った家庭環境に行き着くんですけど…
    「どうしたらええんじゃろう?」と妹は言うのですよ。
    それに私は「だから敢えてオレはこんな生き方をしているんだ。世間様の常識とは逆をいくんだ」と応えたんですね。
    一人から始められることはあるし、一人から始めなければならないと信じて、こんな生き方を貫いてます。

  2. ぢるんぢるん より:

    SECRET: 0
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    私も仕事で「貧困やいじめ」をテーマにしたドキュメンタリー番組を評価する事があります。正直、「観たくない」が本音ですが、仕事なので仕方なく観ます。そして、それをきっかけに、ついつい考え過ぎてしまいます。けれど、考えを吐き出すと、何かひとつ答えは見つかるのです。
    >一人から始められることはあるし、一人から始めなければならないと信じて、こんな生き方を貫いてます。
    これって、まさにそのとーり!ですよね。堂々巡りのような毎日でも、良くなる要因を育ててゆけば、少しずつでも何かが変わりますよね。

  3. nanashi より:

    私も小学生の時に、大阪から両親の故郷の九州に引っ越して、大学入学の為
    離れるまでの期間は本当に辛かったですね・・・・特に辛かったのは学校で先生・同級生から疎外されるのは仕方がないにしても、地元九州の人に戻ってしまった両親までも特に始めの2年ほどは親戚と同調して、関西人気質丸出しの私を邪険に扱って来た事ですな。
    私の居場所は学校にも家にも隣近所にも何処にも無くて、普通なら自殺でもしてたんじゃ無いかなと。
    その中でもわりに理解があった爺さんにしても、方言がさっぱり分からない私に対して「お前耳でも遠いんか?」(まぁ、元々反応がワンテンポ遅れる傾向もありましたけどね(笑))と。
    私からすれば「一体此処は何なんだ?」としか。
    ここ数年、韓国人旅行客や韓国不動産にやりたい放題やられているので話題の島に隣接している島での話ですけどね。
    只、我々にとっては日本の最果てって感覚の場所でも、そこに住んでいる住民にとってはその地域こそ中心で、東京や大阪等の方が僻地って意識なのを(ウンザリする程(笑))学んだという点では、例えば沖縄の在日米軍基地の問題を考えたりする上ではプラスだったとは思いますけどね。

  4. ぢるんぢるん より:

    大人でもノイローゼになってしまう人がいるのに、小さな頃に遠くの土地に引っ越すのは、きっとお辛い経験でしたね。「話していることが相手に伝わらない」という意思疎通が上手く出来ないと、「敬遠」→「誤解」→「無視or攻撃」コースになってしまいます。もう、こんなの「いじめ」です。
    人はスケープゴードを作ることで不安から逃れようとしますが、これは問題の先延ばしです。明日は自分がいじめられるかも知れない不安を先伸ばすだけなのですから…。
    人は皆少しずつ違いますし、その違いを認め合える社会を作っていけるといいですよね♪